「休む」と言う字は、「人」が「木」寄り添っています。英語の「森(forest)」は、「for」「rest」。すなわち、「休息の場」という意味です。東西の言葉が奇しくも同じようなことを表しています。つまり、動物である人は、植物である木と共に存在することで、真の安らぎを得ると言うことです。その心理が、科学的データーで次々明らかになっています。


森林浴の癒し効果はよく知られていますが、その癒しの正体は木の香りです。次のグラフは木の香りの主な成分である【フィトンチッド】を使った実験結果です。木の香り(フィトンチッド)によって血圧が下がり、脈拍も落ち着き、身体的ストレスや精神的ストレスを感じたときに分泌されるコルチゾールの濃度も下がります。ストレスの多い現代人には、木のある空間でリラックスすることも良いのではないでしょうか?

島根大学総合理工学部の中尾哲也教授がまとめた論文は衝撃的でした。団地やマンションなどコンクリート集合住宅に住む人と、木造に暮らす人の平均死亡年齢を比較すると、団地・マンション族のほうが、約9年も早死にしていたのです(調査件数:木造270件・コンクリート集合住宅62件)。「この数字は非常に大きい!」と中尾教授も驚愕しました。さらに全国調査でも「木造率が高いほど平均寿命が高い」ことが立証されています。


さらにショッキングな報告もあります。静岡大学と東京大学の農学部が合同で、「コンクリート」「金属」「木」の3種類の巣箱を使い、ネズミの赤ちゃんの生存率を調べました。するとコンクリ巣箱ではバタバタと93%が死んでしまい、生存率はわずか7%だったのです。金属巣箱が41%、木製巣箱が85%。もちろん湿度、温度、シキワラ、餌は同じで、違うのは巣箱の素材だけでしたが、コンクリと木製とでは生存率に12倍以上の開きが出ました。
そして、コンクリ巣箱で生き残ったネズミも、体重や生殖器重量は一番少なく、虚弱でした。また、研究者が体温測定するため巣箱に指を入れたところ、木製巣箱では指先にすり寄ってくるのに、コンクリ巣箱のネズミはいきなり噛み付いたのです。さらに、コンクリ巣箱で生き残ったメスは、妊娠して子どもを産むと、わが子を噛み殺して食べてしまいました。
コンクリ育ちのオスは、他の巣箱に移すと牙をむいて他のネズミたちに襲いかかり、血まみれにしました。昨今マスコミを賑わす異常事件とイメージが重なり、ぞっとします。
また、巣箱素材でストレス異常行動にも差が見られました。木製巣箱が平均80回に対してコンクリ巣箱が290回。後者は頻繁に異常な動きを示しています。観察記録でも木製巣箱は「静かで」「おっとり」しているのに、コンクリ巣箱では「暴れる」「ケンカが目立つ」など。さらに木製巣箱では母ネズミが「ゆったりと授乳」「子どもをかき集める」のに対して、コンクリ巣箱は「授乳時間が短い」「子どもをかき集めない」など、愛情にも大きな格差がありました。
コンクリート床材の巣箱と杉板床の巣箱をくっつけて、壁に穴を開けておくと、ネズミたちは一斉にコンクリートから杉床に“避難”しました。動物的生存本能が、不自然なコンクリート床を拒否したのです。マウスが好む建材は、スギ>合板>ヒノキ>クッションフロア>塗装合板>コンクリート>アルミ、の順でした。熱伝導率が高い“建材”ほど、体熱を奪う。つまり、体を冷やすから、ストレスが大きいのです。


インフルエンザ大流行のとき、「学級閉鎖率」は木造校舎10.8%に対し、コンクリ校舎は22.8%でした。コンクリ校舎は心身が虚弱化しやすいといえます。さらに養護教員アンケート結果を見ると、コンクリ校舎は木造に比べて、生徒たちは「イライラ」が7倍、「頭痛」が16倍、「腹痛」が5倍、「体が疲れる」が3倍、「火照り」が3倍……と、惨たんたる結果が出ました(調査件数:木造66校・コンクリート80校)。
コンクリ校舎の子どもたちは、病み、疲れきっています。これまで30年間で不登校が8倍に激増しているのも、コンクリ校舎が増えたせいかとも思えてしまいます。そして、木造校舎にすると生徒の「集中力」は3倍アップと報告されており、学力向上を目指すなら、木造校舎に限るのではないでしょうか。
コンクリート建材が心身に悪影響を及ぼすのは、一言でいえば“冷ストレス”によるものです。つまり、体熱を奪ってしまうのです。コンクリート建築に入るとゾクッとするのは「冷輻射」(※)作用によるもので、これは遠赤外線とは逆作用となります。
(※)気温が下がって壁や窓などの表面温度が低くなり、人体の熱がそれらに奪われる現象。壁や窓から離れていても起こる。


林野庁の森林総合研究所の宮崎良文博士らは、木材のさまざまな「癒し効果」を科学的に立証しています。

  • 緊張緩和
    ヒノキ等の香りで「緊張度」(血圧、脈拍数)が改善する。
  • 作業能率
    木の香りで作業能率は5%強も向上。木装オフィス、木装工場は生産性も高い。
  • ストレス抑制
    木の香り成分で「官能評価」でも「気分が休まり」、「瞳孔変化」でも「緊張抑制」が証明されている。
  • 疲労回復
    木の香りをかぐと疲労度(フリッカー値:まばたき回数)が低減する。
  • リラックス効果
    木の香りをかいで脳波測定すると「鎮静」「リラックス」効果が観察される。とくにヒノキでは60%もの「鎮静」効果が確認された。
  • 木の触感
    木肌に手で触れると脳波にα波が現れる。「安らぎ効果」の証拠。
  • ゆらぎ感覚
    年輪、節目は流水の波紋に似て、自然な1/f(ゆらぎ)リズム感を見る人に与える。
  • 木視効果
    室内に50%ほど木肌があると、「温かい」「和んだ」木視(室内で見える木肌)効果が現れる。
  • 視覚癒し
    木肌は暖色系なので「安らぎ」感を与える。「ヒノキ壁」「白壁」を見たときの感情尺度を比較すると、「抑うつ」感情は「白壁」では4ポイント増。「ヒノキ壁」は3ポイント減。さらに「ヒノキ壁」を見ても「怒り」感情はゼロ。「白壁」は3ポイントも「怒り」感情を増やす(日本木材学会、第48回)。
  • 調湿効果
    木の柱はビール瓶約6本分の水分を吸放湿するという。自然木をふんだんに使ったわが家は、長い梅雨時でも室内湿度は60%を超えず、押し入れの布団はいつもサラサラ、ふんわり。
  • 音響効果
    木材の音は心地良い低周波形で安らぐ。アルミなど金属はとがった高周波形で疲れる。
  • 防虫効果
    天然木フローリングにすると、木の芳香で、ダニは激減する。シロアリなどにも防虫効果は大(2%精油率でダニはゼロに!)。

こうしてみると、木材は、人間にとって最上の「癒し系」素材であるといえます。


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